「埋まっていない」は感覚では分からない
「最近予約が埋まらない気がする」という相談をよく受けます。ただ、感覚だけで判断すると、 たまたま空きが目立った1週間の印象に引きずられて、実際には十分埋まっている曜日や時間帯まで 手を打とうとしてしまうことがあります。まず必要なのは、感覚ではなく数字で 「どれくらい埋まっているか」を確認することです。
稼働率の出し方
サロンの埋まり具合を測るときに最初に見るべきなのが「稼働率」です。これは、スタッフが 出勤していた時間のうち、実際に施術をしていた時間がどれくらいあったかを表す数字です。
稼働率 = 施術していた時間 ÷ 出勤していた時間
たとえば1日8時間出勤して、施術していた時間の合計が6時間であれば、稼働率は75%です。 ここで大事なのは、分母を「席の数」ではなく「スタッフの出勤時間」にすることです。 席が3つあっても、出勤しているスタッフが2人しかいなければ、同時に施術できるのは2件までです。 席の数を基準にすると、実際には埋まっているのに「まだ余裕がある」と誤解してしまいます。
制約になっているのは席ではなく人
多くのサロンで、予約が入らない本当の理由は「席が足りない」ことではなく 「スタッフの出勤時間が足りない」ことです。特に指名制のサロンでは、人気のスタッフの枠だけが 埋まり、他のスタッフや他の時間帯には空きが残っている、という状態がよく起きます。 この場合、いくら広告を出してお客様を増やしても、指名の集中を解消しない限り、 埋まらない時間帯は埋まりません。
空いている時間を金額に直す
「空いている時間がある」と分かっても、それがどれくらいの機会損失なのかが分からないと、 対策の優先順位がつけられません。空いている時間 × その時間帯の平均客単価 (1時間あたりの売上)で、失っている売上のおおよその金額が出ます。
たとえば1時間あたりの平均売上が4,000円のサロンで、月に20時間の空きがあれば、 月8万円分の機会損失です。この金額を見ると、対策にどれだけの予算や手間をかけてよいかの 判断がしやすくなります。
曜日と時間帯の谷を見つける
稼働率は月の平均だけでなく、曜日別・時間帯別に分けて見ると対策が立てやすくなります。 多くのサロンでは、平日の午前中や、連休の翌日などに稼働率が落ち込む「谷」があります。 この谷を放置したまま全体の集客だけを増やしても、混んでいる曜日や時間帯がさらに混むだけで、 谷は埋まりません。谷になっている時間帯にピンポイントで来てもらえるような働きかけが必要です。
稼働率をどう記録するか
稼働率を出すには、まずスタッフごとの出勤時間と、施術ごとの開始・終了時刻が記録されている 必要があります。予約システムを使っていれば、施術時間はメニューごとにおおよそ決まっているので、 1日の予約件数とメニューの所要時間から、施術時間の合計を計算できます。出勤時間はシフト表から 拾えば十分です。特別な集計ツールがなくても、表計算ソフトに1か月分を並べるだけで、 曜日別・スタッフ別の稼働率が見えるようになります。
大事なのは、1回だけ計算して終わりにしないことです。キャンペーンをした月、スタッフの人数が 変わった月など、条件が変わるたびに稼働率も変わります。月ごとに継続して記録しておくと、 「先月より埋まっているのか、空いているのか」を数字で比較できるようになります。
対策の優先順位のつけ方
稼働率と機会損失の金額が分かったら、次にやるべきは対策の優先順位づけです。空いている時間帯が 複数ある場合、まずは金額が大きい時間帯から手をつけるのが基本ですが、金額だけで決めると 失敗することもあります。たとえば「土曜の午前」は空いている時間は短くても、そこを埋められれば 平日よりも高い客単価が見込める、といったケースです。金額に加えて、その時間帯に来られそうな お客様がどれくらいいるか(付け替え時期が近い方、半年以上ご来店のない方など)も合わせて見て、 無理なく埋まりそうな時間帯から着手すると、成果が出やすくなります。
実際に測ってみると
UNELMAのグループ店舗の一つで、この稼働率を実際に測ったことがあります。オーナーの感覚では 「席が3つあって、いつも埋まっている」という認識でしたが、1か月分のデータを稼働率で 見直したところ、3つの席が同時にすべてふさがっていた時間は、月あたりわずか5.0時間しか ありませんでした。これは、その月に施術が行われていた時間全体のうち1.6%にすぎません。
つまり、このサロンで実際に制約になっていたのは「席の数」ではなく「スタッフの出勤時間」でした。 席を増やす、内装を変える、といった投資をする前に、まず出勤時間あたりの稼働率を 確認すべきだった、という例です。
まとめ
予約が埋まらないと感じたら、最初に見るべきは「稼働率」です。分母をスタッフの出勤時間にして、 曜日・時間帯ごとに分けて見ることで、本当に手を打つべき場所が見えてきます。 感覚で判断する前に、まず数字を確認することをおすすめします。